URACHIKA LECTURE · 2026.07.26

AIカンパニーの
つくりかた

AIを「使う人」から、「雇う人」へ。

会社はぜんぶ、パソコンの中のフォルダでできています。 魔法のAIではありません。記憶・ルール・納品物を「読める形」で置くことから始まります。
対象AIカンパニーが初めての方
ゴール仕組みを自分の言葉で説明できる
持ち帰り最小スターターを1つ作れる
02
FIRST, REMEMBER THESE

要点まとめ

今日の話は、まずこの3つだけつかめば大丈夫です。

会社の記憶を読んで働く

AIカンパニーとは、AI社員が出社時にルール・商品知識・過去の成果物を自分で読んでから働く仕組みです。

実体はフォルダとファイル

建物はObsidianのフォルダ。中身はMarkdownという普通の文章ファイルです。人にもAIにも読めます。

品質は「仕組み」で決まる

賢いAIを選ぶだけでは足りません。機械検品・鮮度管理・別のAIによる検証で、仕事の品質を固定します。

03
WHAT IS AN AI COMPANY?

AIカンパニーとは

ひと言でいうと、「説明し直さなくても、会社のことを読んで働けるAI社員の集まり」です。

パソコンのフォルダの中に会社が建ち、AI社員がルールや商品知識を読みながら働く様子
フォルダが会社の建物です。棚にある「会社の記憶」をAI社員が読み、部署ごとの仕事を進めます。
毎回ゼロから

ふつうのチャットAI

  • 新しい会話を開くたびに前提がリセット
  • 同じ説明・資料・文体をまた渡す
  • 出来上がりが会話ごとに揺れやすい
出社して記憶を読む

AIカンパニー

  • 会社の案内板から読む場所を判断
  • 部署ルールと社員の手順書に従う
  • 納品物とコメントが次の仕事に残る
毎回説明が必要なチャットAIと、会社の記憶を読んで働くAIカンパニーの比較図
左は「毎回説明」、右は「記憶を読む」。AIそのものの頭が変わるのではなく、仕事前に読める会社の記憶があるかどうかが違います。
AIの頭脳を育てる、ではありません。

AIが読むフォルダのほうに会社の知識を積み、毎回そこから仕事を始められる状態を育てます。

04
THE REVEAL

仕組みの正体

種明かしをすると、エンジン・建物・ルールブックの3つで動いています。

エンジン Claude Code

フォルダを読み、判断し、文章やコードを作り、スクリプトを実行する「働く側」です。

建物 Obsidianの vault

vault(ボルト)とは、Obsidianで使うフォルダのこと。会社の記憶がここに並びます。

1

MEMORY.md — 会社の案内板

会社の目的、部署の地図、絶対に守ることを最初に読みます。「次にどこを読めばよいか」が分かる入口です。

130_ai_company / 会社の建物
MEMORY.md                 # 会社の案内板
00-rules/                  # 全社共通ルール
02-company_knowledge/      # 商品・教育・マーケの正本コピー
03-AI_departments/
  ├─ 01_marketing/
  │   ├─ _RULE.md          # 部署ルール
  │   └─ brain-article-writer/
  │       ├─ SKILL.md      # 社員の手順書
  │       └─ growth-log.md # 育成のあゆみ
  ├─ 02_sns/
  ├─ 03_education/
  ├─ 04_backoffice/
  └─ 05_product_qa/
06-todo/                   # 発注箱
output/                    # 納品棚
読み順が決まっているから、迷子になりません。

案内板 → 部署ルール → 社員の手順書。大きなルールから細かな作業へ、順に絞り込みます。

社員は毎回、①会社のルール、②自分の手順書、③園長のコメントと直近5件を含む伝言メモ、④専門知識の順で机の書類を読んでから働きます。 仕事は機械検品に合格するまで納品できません。納品後の📝コメントは伝言メモに積まれ、次の仕事のやり方が変わっていきます。 顧問は本流の外にいて、迷う判断や節目に「作らずに判定だけ」を返します。

依頼を受けたAI社員がルール、手順書、伝言メモ、知識を順に読み、仕事、機械検品、納品、園長のコメントへ進み、顧問室が仕事の手前でGOまたはSTOPを返す流れ
依頼から納品・コメントまでが1本の流れです。顧問室は仕事の外側からGO/STOPだけを返し、成果物は社員が作ります。
05
WHY OBSIDIAN?

なぜObsidianなのか

難しいデータベースではなく、「普通の文章ファイル」で会社を持てるからです。

Markdown

人も読める。AIも読める。

Markdown(マークダウン)は、見出しや箇条書きを記号で書くシンプルな文章ファイルです。 特別なアプリがなくても内容を確認でき、AIもそのまま読めます。

Dropbox同期

MacでもWindowsでも同じ会社

同じフォルダを同期すれば、どちらのパソコンからでも同じ案内板・ルール・知識を読んで出社できます。

File first

納品物も日報も残る

チャット欄に流れて消えず、HTML・画像・日報・メモがファイルとして残ります。検索も再利用もできます。

No magic

仕組みを人間が見直せる

AIしか読めない箱に閉じ込めません。間違ったルールがあれば、人が開いて直せます。

06
SEVEN BENEFITS

AIカンパニーを作るメリット

便利になるだけでなく、仕事が「記憶 → 実行 → 学習」の循環になります。

01

毎回の説明がいらない

案内板・商品知識・過去の納品を自分で読み、同じ前置きを繰り返さずに始められます。

02

品質が固定される

社員ごとの手順書や、なりタイの文体ガイド37ルールが「いつもの品質」を支えます。

03

発注から納品まで自走

発注箱を読み、必要な知識を探し、制作し、検品し、納品棚へ置くところまでつながります。

04

寝ている間も準備が進む

朝刊やダイジェストの「決まった便」を予約し、起きるころにはDiscordへ届く形にできます。

05

成果物が資産になる

納品棚に残った文章・HTML・画像が、次の仕事の参考資料として会社へ還流します。

06

PCやAIをまたいでも同じ会社

共有するのは会社のファイル。別のPC・別のAIでも、同じルールを読めば仕事の土台を共有できます。

07

社員が育つ

園長のコメントを育成台帳 growth-log.md に残し、社員は始業時に直近5件を読んでから働きます。

07
REAL COMPANY, REAL STRUCTURE

なりタイAIカンパニーの現在地

2026年7月26日時点。小さな実験ではなく、役割分担された組織として動いています。

5部署
19AI社員
7顧問
マーケ部5人、SNS部5人、教育部4人、バックオフィス2人、品質保証部3人の合計19人と顧問7人の組織図
5部署に19社員、別室に顧問7名。顧問は成果物を作る社員ではなく、迷ったときにGO/STOPの判断を返す相談役です。

マーケ部

Brain記事ライター、LPライター、リサーチ、AIニュース編集長、軍配=マーケ参謀など。売り方と届け方を担当します。

SNS部

Threads、X、かなこ、stand.fm、投稿分析など。媒体ごとの型と実測を持ちます。

教育部

提案書、商談の仕込み、動画講義、セミナー資料。難しいことを噛み砕いて教える部署です。

バックオフィス

秘書とウラチカ運営。会社の作業待ち、日報、コミュニティ運営を整えます。

品質保証部

目付=ユーザーテスト担当。作った人とは別の視点で、初めて触る人が迷わないかを壊すつもりで確かめます。

顧問室は「作らない」

戦略・値付け・規約・顧客の声など、論点ごとに判断だけを返します。作る社員と判断する顧問を分ける設計です。

08
A DAY IN THE COMPANY

1日の動き

園長が眠っている間に「準備」が進み、朝は判断が必要なものだけDiscordに届きます。

深夜の日記から朝のニュースと会社ダイジェストまでを時刻順に示したAIカンパニーの1日
夜から朝へ、日記・通知・3つの朝刊・会社ダイジェストがリレーします。日曜08:00には知識の鮮度をそろえる週次同期も実行します。
学びの日記OpenClawが担当
日記の通知便納品を検出
ウラチカ通知便運営件数を要約
Threads朝刊投稿候補を準備
X朝刊投稿候補を準備
AIニュース朝刊一次情報を厳選
会社ダイジェスト今日の仕事と投稿待ち
週次同期鮮度・検品・集計
人間の仕事は「テーマ出し・承認・コメント」

園長は届いた納品を見て、投稿するかを判断し、返信の先頭に📝を付けてコメントします。その言葉が次の育成に残ります。

09
OPERATIONS, NOT A DEMO

品質の仕組み

入門教材は「まず作って動かす」ところに強みがあります。実運用では、その上に壊れにくくする仕組みを重ねます。

論点 入門段階の一般例 なりタイAIカンパニーの実運用
完了判定 AIの「できました」を確認する 38本超の機械検品ゲート。exit code 0だけを完了とし、字数・禁止語・旧価格・動画のffprobe実測まで確認します。
知識管理 資料を貼って、そのまま使う 撮影日付きスナップショット+鮮度台帳。知識源の更新をSTALE(古い状態)として検知し、再蒸留します。
実測 作った時点で終える 投稿の実測 → 型別の打率 → プレイブック更新を循環させます。
検証 作ったAIがそのまま自己確認 別のAI・別の文脈が、壊すつもりで検証します。これがフレッシュコンテキストです。
失敗 その場で直して終わる 教訓ログへ記帳し、同じ失敗が3件たまったらルールやスクリプトへ焼き込みます。
育成 人間が毎回その場で教える growth-logを全19社員に配備。園長のコメントを台帳に残し、始業時に直近5件を読んで反映します。
39

鮮度チェックで、BRIEFの「38本」から1本増えていました。

制作時に checks/*.yaml を実測すると39ファイルでした。本資料では契約文の「38本」を残しつつ、 現在値を「38本超/39ファイル」と明記しています。増員や改善でゲート自体も育っています。

良い設計は、ためらわず輸入する。

育成台帳の考え方は、良い入門設計から学び、当日に19人全員へ展開しました。先にあるものを尊重し、運用に合う形へ取り込みます。

10
SEE IT / OPERATE IT

ビジュアル管理 vs Discord管理

どちらか一方ではありません。「眺める窓」と「毎日触る入口」を分けています。

社員の様子を見るオフィス画面と、日々の納品・コメント・承認に使うDiscordの役割分担
毎日はDiscord、ときどきオフィス画面。オフィス画面は社員の成長を眺め、Discordは仕事を受け取って動かす場所です。

オフィス画面

社員のアバター、レベル、納品数を眺める窓。コメントが育成台帳へ入り、成長が見える楽しさを担当します。

  • 組織の全体像を見る
  • 社員の成長を楽しむ
  • ときどき開く

Discord

納品を受け取り、📝コメントし、承認する毎日の操作入口です。仕事の種類で4チャンネルに分けます。

🔔 要アクション 📦 納品 ⚖️ 顧問所見 🗓️ システム
11
WHO WORKS BEHIND THE SCENES?

裏で動いているAI

AIに全部やらせません。判断が必要な仕事と、決まった作業を分けています。

Claude Code、サブエージェント、Codex、OpenClaw、決定的スクリプトの役割分担図
Claude Code本社は判断、サブエージェントは探索と別文脈の検証、Codexは画像と第三者視点、OpenClawは常駐の日記係。 時刻どおりに運ぶだけの便はTask Schedulerと決定的スクリプトが担当します。

Claude Code本社

会社の記憶を読み、どの社員へ振るかを判断し、文章・コード・仕組みを実装します。

サブエージェント

探索や並列作業、作った本人とは違う文脈での検証を担当します。

Codex

画像生成やUI実装、第三者視点の検証を担う工房です。

OpenClaw

常駐して夜の学びの日記をまとめる、受付兼日記係です。

Task Scheduler+決定的スクリプト

同じ入力なら同じ結果になる処理を、予約した時刻に確実に運びます。LLMを使わない便なので、生成トークンは使いません。

考える・選ぶ・書く判断はAI
数える・移す・時刻どおり動かす固定作業はスクリプト
12
START SMALL

始め方は3ステップ

最初から19人の会社は不要です。まず1フォルダ・1社員・1つの納品で始めます。

会社のフォルダを作る

CLAUDE.md に「あなたは○○担当の社員です」と書き、守るルールを3つだけ置きます。

手順書を1枚書く

SKILL.md に「何を入力に・何を参照し・どこへ納品するか」を決めます。

納品へコメントを返す

良かった点と次に直す1点を返します。その言葉が、次の仕事に効く育成記録になります。

最小スターター・ワークシート

3か所を書き換えて、そのままコピーできます。
あなたは「週次レポート担当」のAI社員です。

仕事を始める前に、必ず会社のルールを読んでください。

【入力】
- 今回の発注内容

【参照してよい資料】
- data/ と過去の reports/

【手順】
1. 発注内容を確認する
2. 必要な資料だけを読む
3. 下書きを作る
4. 禁止事項と抜け漏れを検品する

【納品先】
- output/weekly-report.md

不明点は勝手に決めず、「確認が必要」と分けてください。

今日の宿題:社員を1人だけ雇う

自分が毎週くり返している仕事を1つ選び、上のワークシートで「役割・参照先・納品先」を決めてください。

15分で着手

🎁 手ぶらで始めたい人へ — スターターキット配布中

この章の3ステップを組み込み済みのミニ会社一式(ZIP・約22KB)を用意しました。解凍してClaude Codeで開き、「かいしゃを建てて」と話しかけるだけで開業します。

キットのダウンロードと始め方 →
13
FACT-CHECK & SAFETY

安全と注意

自動化できることと、自動化してよいことは別です。人間が止める場所を先に決めます。

SNS投稿は人間が行う

AIは候補を作り、Discordへ届けるところまで。最終確認と投稿ボタンは人間が担当します。

個人情報は金庫へ分ける

公開物に出してはいけない情報は、AI社員の通常業務から読めない金庫フォルダへ分けます。

収益を保証しない

結果を断定する言い方はしません。条件と個人差がある前提で、期待できる範囲を正確に伝えます。

確認すること安全な運用避けること
外部公開下書き→人間が確認→投稿AIが確認なしでそのまま公開
個人情報金庫フォルダに分離し、成果物から除外会員名・顧客名・認証情報を混ぜる
数字・価格正本ファイルと機械検品で照合AIの記憶だけで最新値と断定
不明点reviewへ分け、人間に確認それらしい内容を補って進める
14
THREE TAKEAWAYS

結論

FINAL MEMO

AIを雇うとは、
仕事の記憶と型を渡すこと。

会社は大きなシステムから始まりません。フォルダを1つ作り、手順書を1枚置き、納品にコメントを返す。 その小さな循環が、説明しなくても育っていくAIカンパニーの最初の一歩です。

01 記憶AIカンパニーは、会社の記憶を読んで働く仕組み。
02 実体魔法ではなく、フォルダとMarkdownファイルでできている。
03 品質機械検品・鮮度管理・別文脈の検証が仕事を守る。